ソングス・フォー・ア・テイラー』(Songs for a Tailor)は、スコットランドのミュージシャン、ジャック・ブルースがクリーム解散後の1969年に発表した、ソロ名義では初のスタジオ・アルバム。ただし、録音順としては次作『シングス・ウィー・ライク』(1968年8月録音、1970年発表)に続く2作目に当たる。

背景

クリームの4人目のメンバーと言われた作詞家ピート・ブラウンと、クリームのアルバム『カラフル・クリーム』(1967年)、『クリームの素晴らしき世界』(1968年)をプロデュースしたフェリックス・パパラルディが引き続き起用された。

アルバム・タイトルの『ア・テイラー』とはクリームの衣装をデザインしていたジーニー・フランクリン(Jeannie Franklin)のことである。フランクリンは本作が制作されていた1969年5月12日に交通事故で死去し、本作は彼女に捧げられた。

「ハーミストンの運命」と「クリアーアウト」はクリームの未発表曲の再録音で、クリームが1967年3月15日に残したデモ録音はアルバム『カラフル・クリーム』のデラックス・エディション盤(2004年発売)にボーナス・トラックとして収録された。「イマジナリー・ウェスタン」もクリーム時代の曲だが、クリームによる録音は残されていない。エリック・クラプトンがこの曲を嫌っていたという説もあるが、彼は『アンカット』誌2004年5月号のインタビューにおいて、この曲を称賛している。

参加ミュージシャンのジョン・ハイズマンとディック・ヘクストール=スミスはコロシアムのメンバーで、1968年に行われた『シングス・ウィー・ライク』のセッションでもブルースと共演した。クリス・スペディングはブラウンが率いるピート・ブラウン・アンド・ヒズ・バタード・オーナメンツのメンバーで、後にブルースのツアー・バンドのギタリストとしても活動した。またジョージ・ハリスンがクリームの「バッジ」に続いてL'Angelo Misteriosoという変名で「彼女は調子っぱずれ」に参加したが、彼のパートの音量はミキシングの段階で抑えられた。

ブルースは、本作の参加ミュージシャンのうちハイズマン、ヘクストール=スミス、ハリー・ベケット、ヘンリー・ロウサー、ジョン・マンフォードの5人と、ニール・アードレイ率いるニュー・ジャズ・オーケストラのアルバム『Le Déjeuner Sur L'Herbe』(1969年)でも共演している。

ブルースは2014年のアルバム『シルヴァー・レイルズ』を制作するに当たり、本作を雛形として使ったと語っている。

反響・評価

母国イギリスでは、ブルースのソロ・アルバムとしては唯一の全英アルバムチャート入りを果たし、9週トップ100入りして最高6位を記録するヒット作となった。アメリカのBillboard 200では55位を記録するが、以後5年間にわたり、ブルースのアルバムが全米チャート入りすることはなかった。

Joe Viglioneはオールミュージックにおいて5点満点中4点を付け「このアルバムはジャズとポップの最もユニークな融合の一つであり、ブルースのキャリアにおいて特に重要なジャンルであるブルース色はそれほど重視されていない」「構造、演奏、演出のいずれも申し分ない」と評している。また、ピーター・マーシュは2003年、BBC公式サイトにおいて「ありがちな言葉だが『名盤』と呼ぶに値する」「表面的にはシカゴやブラッド・スウェット・アンド・ティアーズといった初期のジャズ・ロックに近いが、このアルバムはより冒険的で、上品なご馳走だ」と評している。一方、ロバート・クリストガウはB-を付け「彼の背後でどんな事が起こっていようと、ブルースはソロ・シンガーとしては成功していない」と評している。

リイシュー

1973年のオランダ盤再発LPは『Superstarshine』というシリーズの第30弾として発売され、ジャケット・デザインはオリジナル盤と異なる。また、2003年のリマスターCDには、「ミニストリー・オブ・バッグ」のデモ・ヴァージョンと、未発表の別ミックス3曲がボーナス・トラックとして追加された。

収録曲

全曲とも作詞はピート・ブラウン、作曲はジャック・ブルースによる。

  1. 彼女は調子っぱずれ "Never Tell Your Mother She's Out of Tune" – 3:41
  2. イマジナリー・ウェスタン "Theme for an Imaginary Western" – 3:30
  3. 滝へのチケット "Tickets to Water Falls" – 3:00
  4. ハーミストンの運命 "Weird of Hermiston" – 2:22
  5. 月への縄ばしご "Rope Ladder to the Moon" – 2:53
  6. ミニストリー・オブ・バッグ "The Ministry of Bag" – 2:49
  7. リッチモンド "He the Richmond" – 3:35
  8. ボストン・ボール・ゲーム "Boston Ball Game, 1967" – 1:45
  9. アイゼンガード "To Isengard" – 5:27
  10. クリアーアウト "The Clearout" – 2:35

2003年リマスターCDボーナス・トラック

  1. ミニストリー・オブ・バッグ(デモ) "The Ministry of Bag (Demo)" – 3:43
  2. ハーミストンの運命(別ミックス) "Weird of Hermiston (Alt. Mix)" – 2:28
  3. クリアーアウト(別ミックス) "The Clearout (Alt. Mix)" – 3:00
  4. ミニストリー・オブ・バッグ(別ミックス) "The Ministry of Bag (Alt. Mix)" – 3:53

参加ミュージシャン

  • ジャック・ブルース - ボーカル、ベース、ギター、チェロ、ピアノ、ハモンドオルガン
  • フェリックス・パパラルディ - ボーカル(#5、#9)、パーカッション(#7)、ギター(#9)
  • ジョージ・ハリスン - ギター(#1)
  • クリス・スペディング - ギター(#2、#3、#4、#6、#9、#10)
  • ジョン・ハイズマン - ドラムス(#1、#2、#3、#4、#6、#8、#9、#10)
  • ジョン・マーシャル - ドラムス(#5、#7)
  • ディック・ヘクストール=スミス - サクソフォーン(#1、#6、#8)
  • アート・セーマン - サクソフォーン(#1、#6、#8)
  • ハリー・ベケット - トランペット(#1、#6、#8)
  • ヘンリー・ロウサー - トランペット(#1、#6、#8)
  • ジョン・マンフォード - トロンボーン(#8)

カヴァー

  • 「彼女は調子っぱずれ」 - エレン・マキルウェインのアルバム『We the People』(1973年)に収録。
  • 「イマジナリー・ウェスタン」 - ハイズマンとヘクストール=スミスが結成したコロシアムのアルバム『ドーター・オブ・タイム』(1970年)、パパラルディ(ベース、ボーカル)がレスリー・ウェスト(ギター、ボーカル)と結成したマウンテンのアルバム『勝利への登攀』(1970年)、ウェストのソロ・アルバム『Theme』(1988年)に収録。ブルースはウェストのカヴァーに参加した。
  • 「リッチモンド」 - ブルースのアルバム『シャドウズ・イン・ジ・エアー』(2001年)に収録。ヴァーノン・リードがゲスト参加した。
  • 「ボストン・ボール・ゲーム」 - 「リッチモンド」と同じく『シャドウズ・イン・ジ・エアー』(2001年)に収録。

脚注

注釈

出典

外部リンク

  • ソングス・フォー・ア・テイラー - Discogs (発売一覧)

ソングス・フォー・ドレラ 4Kレストア版 アップリンク京都

テイラー・スウィフト、『フォークロア』は「あの飲み物」と一緒に堪能してほしい FRONTROW

ソングス・フォー・ドレラ(映画)の無料動画はどこのサブスクで配信中? ワンスクリーン

テイラーの音楽の変遷① 【原点のカントリーミュージック】 Webon(ウェボン)

【本日のご褒美】テイラー・スウィフトの8thアルバム『フォークロア』がサプライズリリース古くから伝わる“民族伝承”をテーマに、架空の登場人物の